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コラム

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パソナナレッジパートナーの知財コラム

掲載日:2021.08.30

コロナ禍により、実用新案の出願増⁉

2020年はコロナ禍の影響により、実用新案登録出願件数が大きく増加しましたので、この状況を簡単に分析してみました。

実用新案、前年比15%増を検証する

2021年7月14日に特許庁から発行された特許行政年次報告書2021年版によると、「実用新案登録出願件数は前年比15%増となったが、これは新型コロナウイルス感染症対策に関するある分野の考案が増加したためである」、とか「実用新案登録出願件数は、近年減少傾向にあったが、2020年は、マスク等の技術が活発に考案されたため、前年比15%増の6,018件であった」とのことで、これを検証してみました。

まず図1に2000年以降の日本国特許庁への特許、実用新案、特許協力条約に基づく国際出願(PCT国際出願)の件数推移を示します。

※2004年から2005年の実用新案の出願件数の変化は、改正実用新案制度の施行に伴うもの
※特許庁 特許行政年次報告書の各年の数値により作成

特許、実用新案の出願件数は2000年をピークに減少し続けている一方、PCT国際出願の出願件数については企業活動のグローバル化により、国外での知財戦略の重要性の高まりから増加傾向でしたが、2020年については前年から減少する結果となりました。
このような中、実用新案の出願件数は2020年については前年から大きく件数が増加しています。

マスク関連出願の抽出

図2には、2016年から2020年までの以下の3つの国際特許分類(IPC)が付与されている実用新案と特許をマスク関連出願として抽出した件数を示しています。
[使用した国際特許分類(IPC)]
 A41D13/11 (・身体の特定部分のみを保護するもの ・・保護用の顔面マスク)
 A42B 3/20 (ヘルメット ・・・フェイスガード)
 A62B18/02 (呼吸マスクまたはヘルメット ・マスク)

※2021年8月12日発行までの公報データに基づき集計

2019年から2020年の実用新案全体の出願件数の増加分が777件あり、このうち、マスク関連出願の増加分が454件となっており、マスク関連出願の増加の寄与が大きいことがわかります。なお、特許については出願から1年半経過後に公開されるものが多く、2020年の出願件数については、本データの抽出時点では公開されていないものも多く存在する可能性があり、この時点では出願件数の傾向を知ることができない状況となっています。

表1には2020年の実用新案のマスク関連出願の出願件数が多い出願人の上位7者(社)を示しています。なお、8位以下の出願人毎の出願件数は2~1[件/出願人]となっています。また、個人名での出願も多くみられます(全出願人数の約40%が個人名)。

マスク関連の実用新案の出願件数と日本国内における新型コロナウイルス陽性者数の比較

図3では2020年の月毎のマスク関連の実用新案の出願件数と日本国内における新型コロナウイルス陽性者数を比較してみました。

※新型コロナウイルスの陽性者数の数値は厚生労働省のオープンデータから

日本国内で初めて新型コロナウイルス感染者の発生が確認されたのが2020年1月16日で、その翌月の2月から出願がなされていることがわかります。その後、1回目の緊急事態宣言が解除(5月25日)され、出願は減少しましたが、感染者数の増加に伴い、11月からは再び出願件数は増加しています。

以上のように、出願から2~3ヶ月で公報が発行される実用新案の出願件数を分析することによって、2020年の出願傾向を知ることができました。

無審査登録である実用新案制度については、その活用は限られたものとなっていますが、今回の場合は、実用新案を調べることでコロナ禍における直近の知財を取り巻く状況の特徴的な動きを捉えることができました。このことから、知財情報分析を行うときに、どのような情報を用いるべきかの判断については、広い視野と柔軟な発想で分析実務を進める必要があると言えそうです。

著者プロフィール

戸田 俊之

株式会社パソナナレッジパートナー 大阪事業部 部長(兼)知財ソリューション事業部 グループ長

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