PASONA Knowledge Partner

Language Japanese/ English

コラム

知的財産領域で知財管理・特許調査をおこなう
パソナナレッジパートナーの知財コラム

掲載日:2022.03.31

中国特許のリスク管理 3つのポイント

中国の特許環境は中国語のみで公開された文献の増加などにより、調査品質の確保や権利化上のリスクが高まると予測されており、各企業様では知財管理の見直し・強化が急務となっています。今回は私どもが企業内の知財部としてリサーチに取り組んできた経験から、中国特許のリスク管理に対する3つのポイントを紹介します。

【ポイント1】翻訳文から中国語原文検索に切り替え、特許調査の質を向上

中国の特許調査は日本や諸外国の調査と同じく、計画→設計→集合→評価→分析というプロセスをたどります。この中で調査結果の品質に大きく影響を与えるフェーズは「集合」と「評価」です。この2つの工程を詳細に分析して見直すことで、より正確な調査結果を得ることができます。たとえば「集合」のフェーズであれば文献から検索する際に特許分類やキーワード選定を見直すことが重要です。「評価」フェーズでは翻訳ツールやスクリーニング言語の選択も大きく関わってきます。

■中国の特許環境の主な特徴

また、中国での特許環境の特徴を踏まえたうえで調査を実施することも重要です。中国特許環境は「出願件数が膨大」「出願言語は中国語」「IPCの付与精度が低い」という3つの特徴を持っています。

これらの特徴により、「中国語文献対象に英文キーワードで検索しているがきちんとヒットしているのか」といった疑問や、「膨大な出願件数の中から、キーワードやIPCで絞る必要がある」「特にIPCで絞ると検索件数が多くなり、さらにキーワードで絞らなければならない」といった検索の手間が増えてしまうといった課題が発生してしまいます。このことから中国特許調査の質を高めるカギは、中国語キーワード選定にあることが分かります。

■翻訳文での調査

上の図は従来から行われている機械翻訳文での調査(代替調査)の方法を示しています。中国語原文の明細データを機械翻訳した翻訳文(英語/日本語)でサーチャが検索し、英語/日本語で評価しています。

■中文キーワードと英文キーワードのデータベース別ヒット件数の比較

このグラフは4種類のデータベースにおいて、中文キーワード(赤色)と英文キーワード(青色)で検索したヒット件数の対比です。この結果から中文キーワードに比べると英文キーワードのヒット件数がかなり少ないことが分かります。また英文キーワードのヒット件数は、データベースごとに大きく差が生じています。この結果から翻訳文での検索結果の信頼性に疑問を感じるのではないでしょうか。

■中国語原文での調査に変更

そうした課題を解決するためには、中国語原文へのダイレクト検索に切り替える必要があります。また中国語での評価に変更することにより、翻訳文からの検索で生じる「調査結果の信頼性が低い」というリスクが低減します。

【ポイント2】人材育成と外部調査会社の確保により調査体制を強化

中国語原文のキーワード検索に変更したからといって、すぐに調査品質を担保できるわけではありません。調査の抜け・漏れなどをチェックする仕組みづくりや人材確保などにより、特許調査の体制を強化することが重要です。
特許調査の体制を強化する方法としては、次のアプローチが考えられます。

一つ目は語学力や中国調査のノウハウを持つ人材の育成です。社内サーチャが語学留学や在華調査会社に駐在することにより、語学力と調査ノウハウを身につける方法です。語学留学では予備知識取得のために事前の準備が重要であり、在華調査会社への駐在では協力先の選定や現地での支援体制が必要不可欠です。

二つ目はアウトソース先の選定です。アウトソース先の選定は通常、探索→面接→試行→評価→実務→改善というプロセスをたどります。探索のフェーズでは、依頼する調査業務がその会社のメイン業務なのか把握することが重要です。試行と評価のフェーズでは、自社の調査スタイルと合致しているかを確認することも大切になります。さらに実務段階でも、定期的に自社のスタイルに合っているかをチェックし、必要に応じてチューニングや検討会を実施して継続的に改善を図っていきます。


【ポイント3】外部委託会社を活用し、特許調査体制の立ち上げを加速

中国特許環境の急激な変化に対応するためには、早期にリスク管理体制を立ち上げる必要があります。そのために外部委託する方法も有効な手段の一つになります。
私どもはパナソニックのインハウス知財で特許調査を数多く経験しており、ノウハウを蓄積しています。また、中国調査パートナーとの強固なネットワークを築いており、リスク管理の早期対策の支援ができると考えています。

■特許調査のためにパソナナレッジパートナーがお手伝いできること

外部委託の方法は、企業様によって異なります。
私どもでは、お客様の業務の一部を切り出したタスク型調査や、企業知財部様の業務を一貫して請け負うプロジェクト型調査の代行も可能です。たとえば「最新状況の把握を最優先に取り組み、調査結果の評価ができる人材も育成したい」というご要望に対応します。また「リスク管理は充分できているので調査プロセスを見直したい」という企業様には、調査の診断コンサルティングや更新調査を実施することも可能です。

今回は中国特許のリスク管理対策として、3つのポイントを紹介しました。
「調査の質を高めるために見直し改善を図る」「調査品質を担保する人材の育成や外部リソースの活用」「中国特許環境の早期把握のために外部の力を活用することも有効」ということを理解していただければと考えています。
今後ますます中国語のみで公開された文献が増加していくことが予測されており、調査品質を向上し、リスクを回避するための参考になれば幸いです。

著者プロフィール

加藤 昌央

株式会社パソナナレッジパートナー 知財ソリューション事業部 リサーチ2グループ
シニアリーダー

> コラム一覧にもどる

まずは、パソナナレッジパートナーに
ご相談ください。

知財活動の効率化や高度化について、「どこから取り掛かっていいか分からない」というお客さまには「知財活動診断」を提供しています。
お客さまの「知財活動」を「診断」させていただき、分析結果をもとに改善内容のご提案からサービス提供まで対応させていただきます。将来に向けた知財活動の変革は私たちにおまかせください。

> お問い合わせフォーム

> お問い合わせフォーム